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気を取り直して。 キレイだとは言いにくい部屋だったけど、正君は俺を歓迎する意思はあったようでチラシ紙を切ってワッカに繋げた飾りが電気の紐から3方向に進んでいる。そうそう幼稚園とかでやるあれね。 そこ気を使うなら、部屋の掃除は出来なかったものかと思ったけど、彼の気持ちは受け取っておくことにした。 今年の誕生日は翌日にあっちのライブがあるもんで、15日夜に決行されることになった今日。そこまでしてとも思いつつ、やはり祝われるのって悪くない。ケーキはさっき火を消したけど、ご飯はどうするつもりなんだろう。外に食べに行っても別に良かったけど、全くもって外出する気の無さそうな正君の部屋着にちょっとがっかりした。俺も部屋では大概だけど、いやむしろこの人のこういう格好ってそりゃそれで新しいかも。 あ、れ…エプロンして…もしやあれか手料理とかいうあれか。外食が多い仕事柄、手料理ってだけでありがたいかも…どっかのインタビューで甘いもの作れるとはあったけどでも正君そんなに料理できなかったような?記憶がごっちゃになってきて、そこまで長い間、お互い手料理振る舞いなんてものをやっていなかったことに気づく。やる気になれば出来るんだけどなかなかねぇ、と言い訳をして、キッチンに向かう正君の後ろをひょいひょいついていった。 大きな鍋がある。 「カレー?」 「シチューだよ」 初めてシチュー作ったけど、カレーと同じで最後ルーが違うだけなんだねなんて、なんだかそんなやり取りすら照れたりする俺はまだまだ純情派なわけね。パン焼いたり手伝おうか?と声をかけたら、ご飯だからいいよと断られた。 ご は ん … ? 座っててと言われたので、少し片付けられるものを片付けて(洋服のタグとか、ちょっとゴミ箱に入れればいいものがたくさんあった)シチューが置けるスペースを作る。ふと気づいて鎮座したままのケーキのローソクを抜いて箱に戻し、冷蔵庫入れようとすれば、意外にも満タン冷蔵庫。正君も久しぶりに料理した+今回のシチューのため、というのが目に見えて分かる具材たちに、少し暖かくなる。 「冬だからどこか寒い場所に置いておけばいいじゃんトイレとか」 心が寒くなる意見には返事を返さず、玄関近くに置いた。トイレはない人として。 シチューは、丼に乗ってやってきた。 PR |
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ピンポーーン。 ぬるくなったコーヒーを飲んだら、なんだか胃の中から冷えてきた。手も一向に温まらない。かじかむ手で呼び鈴を再び鳴らす。 |
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マンションの自動ドアが開くと、寒いなんてものじゃない刺すような風が服と肌の間をすり抜ける。思わずコートの襟に亀のように首を縮めながら、何だこんなの天気予報で言ってなかったじゃないよと口を開けずに喋った。年末年始は帰らなかったけど、実家の方は酷いことになっているんだろうと冬は正直あまり行きたくない遠い阿寒湖を思った。 知らないから言えるのだろうが、あの人この間「なかちゃんの実家に冬行きたい」とかばかなことを言っていた。いつかふたりで行きたいね、なんて歌えないわよ俺。あのバンドの人たち北海道出身だけど確か函館…阿寒湖とは寒さも雪も違うし。慣れてない彼も、昔は慣れていた俺も、風邪ひくのが目に見えている。
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「明、今年の誕生日…」 「ただしくん、 耳元で小さく言われたって揺るがないよ俺は。 「打上げ出てよ」 だからやだってば。そんな指を絡められたって。
小さく囁いていた口が耳に押し付けられて、 |
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何だかんだで毎年誕生日にライブが入っていた俺は、久しぶりのオフ誕生日に マメな性格の明だから、前日から泊まりに来ちゃったりするかななんて思っていたら、その日は飲み会があるからゴメンと言われた。 |
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