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801魂の修行中。
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「ホントこういうの、昔から信じられない」

明の思いつき癖は最近年齢のせいか(やな表現!)治ってしまったと思っていた。昔は「スキー行くぞ!」とか「山行くぞ!」とか、メンバー勢ぞろいで気づいたら明のクルマで寝ているうちに山や海に到着してしまうこともしばしばあった。行ったら行ったで心から楽しんでしまうので、行動に起こしてくれる明をしばしば有難いとも羨ましいとも思っていた。

夜の(朝の?)3時に仕事が終わって家に帰り、シャワーを浴びたところで突然の訪問。新聞屋さんかパン屋さんしか仕事してないようなこんな時間に誰だと恐る恐るインターフォンを覗けば見知った顔がそこにいた。あけてくんない?とまるで小学生が友達の家に「あーそーぼっ」って来るような軽いノリでやってきた。とりあえず部屋に上げて、どしたのここで寝る気かと問えば今から海に行こうなんてそれどんなナンパの科白!?
驚く俺に、隣で寝ててもいいからさとクルマの鍵を見せてちょっと困ったように笑うから、俺は結局一瞬だけ着たパジャマを、私服に着替えることになった。

明治通りから湾岸道路へ抜ける。空がどんどん明るくなって、これからまた夏が来ると実感させられた。リリースがあってツアーがあって、きっと夕方の風が冷たくなって気づいたら秋になってしまうんだろうなと特に感傷もなく思う。隣で運転をする明は、寝てていいと言ったくせに俺にコーヒーをおごってくれた。冷えた缶コーヒーをちびちびすすって、こんなの今までにないなと思う。数え切れない程この人と(正確にはこの人を含む皆と)色んなところへ行ったが、こんな朝、未明に海へなんて無かった。あ、もし事故ったら「今朝未明」ってニュースで言われるんだろうなんて考える。運転を始めてから何も喋らない明にふと何かあったのかと不安な気持ちが持ち上がり、抑えるようにシートに深く沈みこんだ。トラックが増えてきた。高速道路も湾岸道も東京方面に向かう道路は同じように少し混雑していた。帰りは渋滞にはまるかもなんて心配がちょっと頭を掠めたが、どうせ明日はオフなんだからどうでもいいやと思い直した。
海は確かに横を走っているが、防砂林で邪魔されて見えない。
「どうして俺なの」
気になって聞いた。人付き合いの得意な明のことだ、俺より楽しく付き合ってくれる奴や女の子なんてたくさんいるだろうに。それとも何か大事な話でもあるの?リーダーである俺に?それとも俺に?選択肢が並べられた。でも選べるのは俺じゃない。俺は選ぶ権利なんてない。また少しだけコーヒーをすする。そういえば運転免許取るなんて騒いでから数年経つけどやっぱり持ってないままだ。こういうことは曖昧にしてしまうことの方が多い。いつか、って大人が得意な言葉をいつから使うようになったんだろう。
疲労や睡眠欲のせいか、段々暗い思考になってきた頭を叱咤して、こんなドライブなら竜ちゃんも、明の突飛な行動にあんまり免疫のない渕だって喜んで参加したかもしれないよ?と声をかける。昔から意外と信じられないことするよねA型なのに、と言うとまだ血液型信じてるのと返される。ちょっとむっとした俺が口を開くと、かぶせるように明は言った。


「あんたが良かったの」

一瞬の浮上、しかし「今日はあんたが」と続きそうな科白に少しがっかりしている自分に一番驚く。それどういう意味って聞いてもいいんだろうか。許されるんだろうか。



ああどうしよう、海が見えてきた。
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