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微妙な顔をして、それでも普通の会話を継続する力はホント行きずりとはいえあなたをリーダーとして選んで適任だったと思う。覚悟して言った、覚悟して誘った。わかってくれなくてもいいけど、もう10年我慢したよ。多分今までもちょっとはそういう場面はあったし、俺も努力してその場面を作ったところもあったんだろう。でも、それでも関係が変わらなかったのは、やさしさなんだ、俺とあんたの。それがいいことか悪いことかはわからない。今も正直わかっていない。
車を走らせて海が見える駐車場でとめ、隣を見ると寝息を立てていた。そりゃ3時まで仕事してそのままここに連れてきたんだ、仕方ない。それでも穏やかな寝顔を見ていたら、心にずっと溜め込んできたものが海風に流れていくような気がした。そっと窓を開ける。風は冷たくなんて無かった。ああ、これから夏が来るんだ。外の景色も、明け方未明だってのにこんなに明るい。空の色がなんともいえない色になっていてちょっと見せたかったけど、起こす気にはならなかった。 「あんたが、良かったんだよ」 起きてないのを知って、声に出して言った。曲がって伸びている腕を戻してやりながら、硬くなった指先に触れる。自分の同じように硬くなった指先を触れさせる。もう神経が遠くなってしまったのか、想像していたほどなにも感じなかった。必死の自分を少し笑って、シートに深く沈みこんだ。指先は離さずに。他に何も言えない。他には何も無い。 「あんたが良かったの」 「それ本当?」 硬い指先が握られる。 朝日で、海が、あかい。 PR |
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