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801魂の修行中。
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「ウメイロモドキ、キンギョハナダイ、クマノミ、ブルーロックフィッシュ、ムラサキウニ、クロダイ、ウミガラス、フサギン…ポ?」
「変な名前ばっかり。そしてカタカナばっかり」

なかちゃんもっと面白い話してよ、竜ちゃんだったらここで面白い小ネタっていうか、トリビア的なものをさらっと出して来るんだよ。そんな最低な台詞を言われながら、青く染まった正くんの顔をみた。そう口では言いつつもこっちを見る気配はまったくなく、大きな水槽を見上げたまま。午後3時に終わった仕事にどうするわけでもなく、疲れたとかのたまう末っ子は帰宅、三男は別の撮影があるからとマネージャーと一緒に行ってしまった。たまには電車で帰るという正に付き合ったのが間違いだったのか、途中の駅で強引下車させられて、なぜか平日の空きまくった水族館にいる。大きな大きな水槽を見上げていると、ガラスの反射角のせいだと思うが、魚が大きく自分がまるで泳いでいるようにも見える。意外といいかも水族館って。とちょっと喜んでいる自分に気づく。隠すでもなく喜び水槽を覗き込んでいる隣の人はまるで子供のような顔をして、「面白いこと、言って」とまた言った。
面白いことなんて言えねぇし、そう言うと正は少し鼻で笑ってまたオレの続きで魚の名前を読み始めた。ペンギン飼いたいよねえ、なんて言いながら。「イワトビペンギン、フェアリーペンギン、フンボルトペンギン、コイ、タナゴ」ていうか水族館てすごく良い雰囲気なんじゃないのこれは。しかも平日周りにホント人いない(経営は大丈夫か気になったがそれは置いておく)。魚を見るふりをして少し近付くと、肩が触れた。相手からは離れていかなかった。
この水族館で一番大きな水槽に到着する。「ツマグロ、エイ、ヒラメ、マダイ、サバ、イカ、オイカワ、イワ…」途中で止まってしまった魚の名前読み上げを不思議に思って正を見ると、片手のごつごつした指をちょっと水槽に触れさせながら言った。なにこれ雰囲気勝ち?



「なかちゃん、お寿司屋さん行こう」
「…は?」

「まぐろ、おいしそうなんだもん…」


勝者:まぐろ(ただし寿司に限る)
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どうしてこういう展開なわけ!?俺だって多少混乱すっぺ。ミヤ君が珍しく酔いつぶれて寝たから連れて帰るかしょうがねーなって思ってたらもう一人。金髪。パッツンじゃない(っても今ユッケはパッツンやめちまったけど)。
「あの…正さん…?」
起きる気配すらない。タクシーに小さな2人を詰め込んで家に着いた。30分くらい寝たら意外とさくさく起き上がってミヤは家帰るわありがと、とさっき帰ってしまった。2人きり。ていうか竜太朗さんはどこ行っちゃったんだろう仲良しなんだから最後まで面倒見てあげればいいのに、と飲み会最後を思い出すとコール大会とかアメリカ乾杯とか謎のテンションで後半誰が残っていたかすら思い出せなかった。ミヤも大概小さい体だが、ソファに寝かせた正は小さいというより薄い感じがした。こんなんだから、変なおっさんに絡まれたりすんだっけねとちょっと思ったが10近く年上に失礼かなと思い返す。寝室から客用の毛布を引っ張り出して、リビングへ戻るとソファから落ちて床ですやすや寝ていた。この人まじいくつだ…と笑って毛布で包む。ちょっと悩んで諦めてそのままベッドへ運ぶことにする。床で寝られて風邪引いたりしたら、俺竜太朗さんにあわす顔ねえし。持ち上げてその体重に驚愕して、ちょっと心配になる。自分が大きいせいもあるが、女の子もあまり小柄な子は苦手だ。並ぶと酷い図だし正直喋りにくいし何か壊れちゃいそうとか思うのは傲慢だろうか。正さん3人は軽く持てるな…とかしょうもないこと考えながら寝室へ運び、ベッドに降ろすが起きる気配もない。なんだかこの人から平和のにおいを感じて、痛んだ金髪を撫でた。意外と気持ちいい。少し笑ったように見えて、嬉しくなってさらに撫でた。

と、その瞬間広げられた腕に首を絡め取られそのまま布団に突っ伏した。

「ちょ、た、ただしさ…!」

誰と間違ってるのか知らないけどこの力は何!?一体どうしたんだ!?慌てて押し戻そうとするが、細い腕からは想像も出来ない強い力で抱きしめられる。おかしいだろこの図…正面からのチョークスリーパーってなんていうのあああちょっと流石に苦しいんですけどしかもこのまま相手に力を任せると正さんをつぶすことになるからちょっとしのびねーし俺どうしたらいいのちょうつらいよこの中途半端な体勢!顔の横に相手の顔を感じてちょっと慌てる。近ぇし!寝ぼけないでと声をかけるが特に反応はなく、腕をつっぱって2人分の体重を支える。い、いくら軽いと言ってもつらいんですけど…と、首元にちくりと何かを感じてさらに慌てる。おおお勘違い勘違い誰かと勘違いしてるっぺよたすけろー!据わった目で「たつろーくん」とかエー勘違い…じゃ…



「逹瑯…おめ、その首元…」
「…。」
「正さん…!?」
「ミヤ君なんで先帰ったん!?俺あの後大変だった…ってなんでそんな顔して怒ってんの…」
「逹瑯てめぇ俺と正さんが昨日あれだけリーダーって大変だよねそうッスねって話してたの横で聞いてただろうがよ!」
「俺悪くない!俺悪くない!!」
「コロス!!!」

マイペースに俺の作った朝ごはん(納豆付)まで食べておうち帰った正さんタスケテ!
鬼がきたりてって何だっけ小説だっけ漫画だっけどっちにしろこういうことを言うんだろうなっていうくらいの勢いで相手は俺を起こしにかかる。上に乗っかるのは夜だけにしてくださいお願いします。痛いし、ホントそれ痛いし。耳元でそんな大きな声出すのとか、どうするのこのミュージシャン人生を壊す事態になったら。そりゃライブでもっと大きな音聞いてるのは知ってるだろうけど、それにしたって酷いし、何か言ってることも酷いし正君ホントお願いだからあとちょっとだけ寝かせてよていうか知ってるでしょ昨日一緒に作業してたんだから俺が寝てないってこと。あなたはどうしてそんなに元気なのかねとかまあ冷静に考えてる時点で俺って本当は起きてるのかなとか考えて不安になる。いやだいやだそう考えちゃうともう眠れないことが多いんだから、お願いします寝かせてください。打ち合わせ中に睡魔が襲うのとか本当につらいんだから。

「正君、あと5分…」
「竜太朗です」


…目が覚めました。
1、好きな人が出来たんでしょ。そういうのは案外聡い自分が本当に嫌になる。この人の俺への愛は本当にわかりやすいので、そのベクトルが俺に向かなくなった時点ですぐ気づいてしまった。

2、今更ながらに出会いを思い出してみる。あの時俺はどう思ったんだっけ。確か出会いすら酔っていたような気がする。そしていつから友達になって、いつからこういう関係になったのかもう覚えていない。音楽の話がビックリするくらい合って、地元だからなんか親近感沸いて、俺その頃バンドが嫌だったのにこの人となら組みたいってそう思ったんだ。ライブにきてくれて、一緒にお酒呑んで語り合って一緒にやりたくて。ああそんな気持ちどこに置いてきちゃったんだろう。

3、別れを告げるべきか、いや多分明日にでもそういう話になるだろう。そういうところはきっちりしている彼のことだ。いわば仕事と趣味が一緒だったのに、これからはどうしたらいいんだろう。冷静に考えている自分は本当に彼のことが好きなのか、それすら疑問に思ってきた。あ、笑ってる。
間接照明も消すと、カーテンの色のせいかその部屋はキレイなネイビーブルーになった。
意外と明るい都会であることを否応なく納得させられて、その場にいる自分が少し浮遊したように感じる。ここどこ。車のクラクションがひとつ鳴った。こんな時間に何に文句を言うって言うのかわいそうなひと。勝手な想像で笑おうとして、息を吸い込んだらむせた。生理的な涙がにじんで何だか本当に悲しくなった。何だこれ。
ほんの少し前、やっぱりもう大人だから泣きじゃくって喚いてなんて出来なかった。どこかいつも諦めてしまう自分。いつも好きな人にはふられることが多い。また置いていかれた。相手に対する罵り言葉の次は、自分に対する反省が怒涛のようにやってきて、最後にはどちらも選べない自分はじっと耐えるだけしか出来なくなる。しょうがないのでタバコに火をつけた。ボーカルなんだから少しは気をつかうように言ってくれたのも彼であったが、もうこの際どうだっていいだろう。きっと明日からも平穏な日々が始まるのだ。大丈夫。カーテンを開けるとやはり明るい外の景色。ベランダに出る。もっと真っ黒なら良かったのに、紺色より明るい夜空。どこかに同じような人でもいないかと、向かいのマンションのベランダを眺める。もちろん誰もいない。だってもうこんな時間だもの。
闇の色だったか彼のポロシャツの色だったか思い出すと必ずその色、紺より少し鮮やかなネイビーブルー。それが赤く染まるまで、今日はここにいようと思った。
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