２４、さようなら、はじめまして

さようなら、ととても奇麗な声で彼は言った。いつも一緒に帰るから、毎日のように聞いていたその唄うとちょっと高い俺の大好きな声は、今日はなんだか違っていた。 音で言えば♭？どうしたのだって別れるだけでまた明日から仕事で会うんだよ、竜ちゃんにとってはいやなことかもしれないけど明後日の仕事はなんと2人だよいつもは嬉しくてそわそわして明あたりにちゃんとお仕事してきてよあんたたちなんて釘刺されてだいじょーぶだよなんて声揃えて言っちゃってますます心配されたりしてたことを思い出したらつい口許が緩んだ。笑い声も出ちゃってたかも。
そんな俺にまるで汚いものを見るような、それでも縋るような視線を投げた。そのゴミを棄てたのは竜ちゃんなのに。あ、いつのまにか泣いてたんだごめんね気が付いてあげられなくて。

そういえばまるでありがちなドラマみたいなのに、俺このさようならは、はじめましてだ。今度は笑ったりしないように気をつけて言った。
「さようなら」