何だかんだで毎年誕生日にライブが入っていた俺は、久しぶりのオフ誕生日に
少し浮かれていた。のに。
マメな性格の明だから、前日から泊まりに来ちゃったりするかななんて思っていたら、その日は飲み会があるからゴメンと言われた。
俺を優先させないわけですかとは思ったけど、何年もの付き合いで当日なら兎も角前日に来ない恋人を責める自分なんてお寒い気がして、しょうがないと納得した。当日はちゃんとお祝いしますから、と笑った明の顔の口元を見て、もうこの顔を見つづけて何年かと思った。変わらない関係の自分も彼も、相当気が長いのか。何につけても不安に思っていた頃とも違って「夫婦になると情になる」状態の最近は大概のことが許せるようになった、なんてまた寒いことを考えるのはまた年を取るからだ。ちょうど3ヶ月離れてるんだから、真ん中で12月16日に一緒に祝ったことがあったなあ。2年くらい前のような気がするが、もうちょっと考えたら5年は前のような気がした。
一人の部屋で再生していたCDが止まって、ふと静寂が訪れる。
気を使ってくれたのか、一緒に夕飯を食べに行った友人はこの後予定あるんだとかで22時頃早々に退散して下さった。普段夜中に飲んでいることが多い自分は、あいてしまったこんな時間に何をしたものかと考え、少し飲み足りなかったので
コンビニに寄った。他より50円は高いビールを片手に、ふとデザートコーナーに目が止まり、明日また明が買ってくるかどこかで食べる気がしたが、2個セットのショートケーキもカゴに入れた。
暇があれば曲を作る癖に流されても良かったが、今日明日くらいのんびりしようと借りていたDVDを再生した。雑誌片手に見ていたがあまり面白くない気がして消した。
なんだか集中できない。
今更、こんな気持ちになるなんて。
かわいいじゃん俺と少し客観視して、ベッドの上を離れた。冷蔵庫からもう1本あったビールに手を伸ばし、ついでに1個で十分だと思ったケーキも手に取った。2つも食べたら明日はいらない気もするがまあいいだろう。
部屋の時計が言うには、時間は0時回るところ。
ひとりで部屋でケーキ食べながら、0時になるタイミングを見ちゃうなんて何これと心の底から絶望しながら、ローソクさしてお祝いしてやろうかと思った。どうせ寂しいならカウントダウンしてやる。
10秒前。
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4
ジャストに明が駆け込んできたらいいのにな、なんて思って酔った身体で必死に走る明を思い描いて笑った。無理無理。
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1
カチリと針が動く音まで聴いてしまったかわいそうな俺。明は来ないし、間に合わなかった。当たり前だ今夜明は、来ない。
マメな友達から早速メールが届く。返さないことが多いのに、律儀に返信してやった。内容が入ってこないDVDをさっきの続きから再生して、ビール2本(しかも500ml)をあけたら少し頭がふわっとしてくる。もう寝ようと思った。明日の約束もしていないが、どうせ昼前にでも電話かけてくるんだろう。うん、それでいいや。
もう寒いので、ベッドにダイブで寝てはいけないとどうにか掛け布団にもぐりこんだ時に、自分の服がまだパジャマではなかったことに気づいたがもうそれもどうでも良かった。
明日、いや今日はすっごく高いものでもおごってもらおう。
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