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801魂の修行中。
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竜太朗が12月になったことを失念して「もうすぐ師走」ってついーとしたとか、そんなくだらない話に大爆笑しながらの帰り道。とりあえず残すところは年末ライブくらいなもんで、今年も早かったなあと毎年思う通過儀礼のような気持ちになった。そりゃ気づいたらコートも着てるよね。一年なんて本当にあっという間で、20代は10代の半分、30代は20代の半分しかない…なんて言うけど、年が明けたら大台の俺はもう人生老い先短いなんて考えちゃうかも。でも隣で馬鹿笑いしてる長谷川さん(40歳男性)の揺れる金髪を見たら、そんな人生も悪くない気がしてきた。

今年ももう終わりだよねなんて、同じ通過儀礼をしてた長谷川さんは白い息を吐きながら言った。寒いのはまっぴらごめんだけど、冬の凛とした空気は嫌いじゃない。何となくあんたに似てるよと心の中だけで呟いて横を見ると、ポケットから取り出した自分の手をじっと見ている。働けど…ってやつ?そりゃ大して楽にはならざりだけどって言ってやろうと口を開いたところで、真っ赤な指を見てびっくりした。
ぱっくり。

「やばい、指が」

大して割れてないのかもしれないけど、冬の乾燥で血まで出てるしもうイヤこのひとベース弾きじゃないわけ!?

「指が、じゃないし!すげえささくれ?ひび割れ?わかんないけどやめて!」
「いや大丈夫ハンドクリーム持ってる」
「違うでしょーよ、それは予防でつけるもので割れてつけるもんじゃないし!」

こっちの手まで痛くなってきて、どうしてこういうとこズボラなのか理解できないまま、ハンカチで血を拭き取って、財布から絆創膏取り出して、長谷川さんの手に貼ってやった。甲斐甲斐しいねぇなんてもうガックリするようなことしか言われなくてどうしてやろうかと思ったら、さっき言ってたハンドクリームを取り出した長谷川さんは言った。

「このハンドクリーム変なにおいがする」
えーそれ薬用じゃんすーすーはするよ。と軽く返した後、ふと気になって手を引きよせてにおいを嗅いだ。…なんか、すごいくさいとか腐っているとかじゃないんだけどビッミョーなにおいが確かに。


「やっぱ一昨年のじゃだめかー」
ガックリ。

終いには、なかちゃん使っちゃってよもう少しで終わるからとくさいハンドクリームを塗ったくられて、腹立たしかったので手をつないで帰りました。どうせならと2人でにんにく食べるような気持ちだね!と言われてもう返す言葉もございませんでした。手じゃなくて心がひび割れですナカヤマでした。

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