「うっわまた値上げしやがった!」
急にマスクなんて買ったって意味無いって言ってるのに、必死にオークションで
マスクを注文してるなかちゃんを横から眺めるのも飽きた俺は、休憩所に
タバコを吸いに出ることにした。世間を騒がせているインフルエンザの真っ只中
大阪ライブを控えて、事務所からは手洗いうがいが徹底された。
そんなこといわれなくたって子供じゃないんだからと思ったけど、大人だからこそ
うがいなんて最近やってないと気が付いた。タバコに火をつけて息を吸い込んだら、
なんだかタイミング悪くむせてゲホゲホとやっていたら、更にタバコの煙が
変なところに入ってどうにもならなくなってヒイヒイと変な声まで出た。
水が飲みたいけど自動販売機がここのスタジオ外なんだよなあ…あ、まずい。
どうにもならなくて、まだ全然吸ってないのに灰になってしまったタバコを灰皿に捨て、
咳き込みながら外へ出ようとすると真っ青な顔したなかちゃんが立っていた。
「…た………………ただしくん……まさかインフル…」
無性に腹が立ったけどまだむせてて返答が出来ない。首元を掴み、酷い低い声を
どうにか搾り出して言ってやった。
「キスしてうつしてあげようか」
そこ笑うところなのに、その驚いた顔と言ったら!何その顔ちょう変!
と爆笑したらまたむせた。背中撫でてもらったけど。
後日。
どこから調達したのか、真っ黒のマスクやら花柄のマスクやらを
皆に配るなかちゃんに耳打ちされたけど、蹴っ飛ばしてやった。
「マスクしててもちゅーしたくなったら外すから言ってね」
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