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801魂の修行中。
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ああもうこっち向きなさいって、とずっと言いつづけて後ろから抱きすくめられたって、絶対向いてなんてやらないんだと心に誓ってもう10分?もっと経ってるのかもしれない。壁を向いている俺は、なんだかいじけたペットのような気分になってきて、その部屋の様子を思い描いてみると相当おかしいものだとは思った。壁から30センチのところで膝を抱えて壁と対峙している俺と、後ろからどうにもならずに困った声を出しながら俺を小さい子みたいにだっこする中ちゃん。

些細なことでとはよく言ったもので、機嫌を損ねた・損ねられた俺は家を出て行くでもなく、不満をあらわにすべく壁を向いた。怒っているのか、怒っていることを分かって欲しいのか、かなしいのか、もう自分でもよく分からなくなってきた。

「ほらこっち向きなさいって」

なかなかしつこい中ちゃんの言葉に耳を貸さないで、抱えた膝に顔をうずめた。
こんな態度ばっかりで、いつか俺は呆れられるんだろうとはいつも思うのに、それをしないという選択肢を選べない。気づいたらこういう状況で、悪いのが中ちゃんであれ俺であれ、大体中ちゃんが謝って俺の気分が不明になってなあなあになる。それすら分かっているのに、繰り返す俺たちは、いや俺はばかなんだろうなあ。


ふっと後ろのぬくもりがなくなって、心配事は増える。増やしたのは俺。いい加減にしないと呆れられるって分かってて、いい加減のさじ加減を間違える俺。失うのはいやだなあって思って、それでもしょうがないのかもと、最悪は常に想定内。失うのはいやだけど、失って自分が傷つくのが一番いやなんだろう。ああまたしても仲直りしての繰り返し繰り返しだと思っていたのは甘いんだろうか。もう、これは癖だ。

「ただしくん」

ふと、違うように聞こえる中ちゃんの声が、上から降ってきて膝から顔を上げる。壁に見える影で真上に居るのが良く分かった。
戻ってきてくれたという安堵からか、絶対に向いてやらないという決意はもろくも崩れ(元々相当もろい)、彼の位置を想像して真上を向くと、見えると思った顔は一瞬で、冷えたタオルが眼に当てられた。間に氷まで入った親切な濡れタオルを掛けられ、顔ごとごしごしと拭かれる。
明日撮影だってのにその顔で行く気なの、とすこし笑ったのが分かった。
俺本当は笑ってるなかちゃんが一番すきなのに。
言われるまで、そうされるまで、気づかなかったけど俺もしかして


「泣くんじゃないの」
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